
しかし、江戸時代中期、海外への流出に加え、国内での産出が急減、日本は急激に“金欠状態”に陥っていきます。米に頼った幕府は「米価安、諸色(いろいろな商品)高」に抗しきれず、倹約と貨幣の改鋳を繰り返し、財政を支えます。だが、改鋳はカンフル剤のようなもの。財政難は一向に改善せず、改革は悉く失敗に終わります。
三大改革といわれた「享保、寛政、天保の改革」は、実は歴史の流れにさからったあだ花で、むなしい努力に他なりませんでした。幕末には開国に伴って金が大量に流出、幕府の息を止める大きな要因になりました。
そのような中、文化的にも「わび」、「さび」がもてはやされ、狩野派に代表される金を多用した絢爛豪華な絵画は次第に姿を消し、広重、北斎、写楽に代表される浮世絵が主流になっていきます。
だが、人々の金銀への憧憬がなくなった訳ではありません。外は地味でも裏張りは豪華な着物がもてはやされます。このような屈折した形での富へのあこがれが増し、それが大判・小判に象徴されるようになります。紀伊国屋文左衛門、越後屋、鴻池など豪商が力を蓄え、大名はしだいに頭が上がらなくなります。江戸時代は「重農主義に始まり、重商主義で幕を閉じた」のです。この歴史の転換を演出したのが大判・小判によって表現された「金(きん)」でした。
「宵越しの金はもたない」江戸っ子も内心では金=富にあこがれました。その裏返しとして、江戸っ子特有の負け惜しみ精神が広がり、このような金言が生まれたのではないでしょうか。
その移り変わりを小話で綴る形でまとめました。「エピソードで綴る 日本黄金史 古代〜安土・桃山時代」の続編です。例によって、寝っ転がりながら読んでいただければ幸いです。
2015年4月岡本 匡房
�� 江戸時代初期
(一) 家康・秀忠・家光
(二) 金山発掘
(三) 大判・小判
(四) 工芸品
(五) 豪商と御用商人
(六) 黄金の国
�� 江戸中期
(一) 家綱・綱吉
(二) 忠臣蔵異聞
(三) 豪商と西鶴
(四) 変わる美意識
(五) 白石と吉宗
(六) 小判と価格
�� 江戸時代後期
(一) 田沼意次
(二) 江戸っ子と金
(三) 投機と泥棒
(四) 寛政の改革
(五) 殿様と庶民
(六) 幕末と金
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