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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/08/15 12:05, 提供元: フィスコ JSH Research Memo(5):2025年3月期は在宅医療事業が苦戦するも地方創生事業の高成長続く*12:05JST JSH Research Memo(5):2025年3月期は在宅医療事業が苦戦するも地方創生事業の高成長続く■JSH<150A>の業績動向 1. 2025年3月期の業績概要 2025年3月期の連結業績は、売上高で3,967百万円、営業利益で176百万円、経常利益で185百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で144百万円となり、いずれも2025年2月に発表した会社計画値を下回って着地した。主力の地方創生事業は2ケタ増収増益とおおむね計画どおりに伸張したが、在宅医療事業の収益が酷暑等による離職率の悪化に伴う労務費増や売上の下振れにより計画を下回ったことが要因だ。なお、単体業績は売上高で前期比14.0%増の3,968百万円と2ケタ増収が続いたものの、人件費や広告宣伝費等を中心に販管費が同21.1%増と膨らんだことで、営業利益は同10.9%減の185百万円と減益に転じた。 (1) 地方創生事業 地方創生事業の売上高は前期比20.3%増の2,508百万円、セグメント利益は同19.8%増の555百万円と2ケタ増収増益が続いた。同事業に含めていた九州エリアの在宅医療サービス(前期売上高113百万円)を当期より在宅医療事業に移管しており、同影響を除いた増収率は27.2%増となる。このうち、主力の障がい者雇用支援サービスの売上高は同29.1%増の2,441百万円となった。利益率は前期の22.2%から22.1%と若干低下したが、農園の新規開設に伴い減価償却費が前期の94百万円から138百万円に増加したためで、EBITDA(償却費控除前利益)マージンでは26.8%から27.6%と上昇傾向が続いた。会社計画比では売上高で1.4%減、セグメント利益で1.5%減と若干未達となったが、第4四半期に申し込みが集中したのに対して、人材紹介が間に合わなかったことが要因だ。 障がい者雇用支援サービスは、新規に4農園を開設し21農園となった。総区画数1,753区画に対して障がい者受入数は前期末比23.8%増の1,432人と順調に拡大し、稼働率(受入数÷総区画数)も81.7%と高水準で推移した。従来は九州エリアで農園を開設してきたが、2024年12月に札幌、2025年1月に岡山にそれぞれ初めて出店するなど事業エリアを拡大し、地方の障がい者就労需要に対応した。KPIとするARR※1は2025年3月時点で前年同期比25.1%増の2,589百万円となった。ARRの構成要素を分解すると、12ヶ月平均解約率※2は0.32%(前年同期は0.08%)と若干上昇したものの、利用企業数が同18.0%増の203社、ARPA※3が同6.0%増の1,063千円といずれも増加基調が続き、増収要因となった。四半期ベースのリカーリング売上の推移でも、第4四半期は前年同期比27.8%増の588百万円と右肩上がりに伸張した。 ※1 ARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)=MRR×12ヶ月。MRR(Monthly Recurring Revenue)は契約金額ベースの月間リカーリング売上。 ※2 直近12ヶ月の解約によるMRR減少額の合計値÷13ヶ月前から前月のMRRの合計値で計算。 ※3 ARPA(Average Revenue per Account)は1利用企業当たりのMRR。 (2) 在宅医療事業 在宅医療事業の売上高は前期比4.2%増の1,454百万円、セグメント利益は同7.7%減の164百万円となり、計画比では売上高で7.8%減、セグメント利益で33.5%減となった。期末時点の訪問看護ステーション等の拠点数は22拠点と前期末比で5拠点増加し(東京都、岡山県で各1拠点新設、残り3拠点は九州エリアの事業移管による)、訪問看護サービスの利用者数は同4.9%増の2,037人となったものの、九州を除く既存エリアでは同2.8%減の1,888人と若干減少した。酷暑等により看護師の離職率が悪化した影響で新規利用者の獲得が遅延したほか、入院等によるサービス離脱者数の増加が要因だ。このため、総訪問件数は前期比2.2%増の156,664件となったが、九州を除く既存エリアでは同5.6%減の144,665件と減少に転じた。1常勤換算看護師当たりの月平均訪問件数も前期の102件から101件に減少するなど稼働率も低下し、収益悪化の一因となった。期末の常勤換算看護師数は126人と前期末比で9人増加したが、九州を除く既存エリアでは同3人減の114人となった。 積極投資で財務体質は一時的に悪化するが、2028年3月期以降改善へ 2. 財務状況と経営指標 2025年3月期末の連結財務状況は、資産合計が単体ベースの前期末と比較して442百万円増加の2,982百万円となった。主な変動要因を見ると、流動資産では売掛金及び契約資産が33百万円増加した一方で、設備投資の増加(前期比650百万円増の793百万円)に伴い現金及び預金が386百万円減少した。固定資産は新規農園の開設等により有形固定資産が657百万円、差入保証金が42百万円それぞれ増加したほか、ショウタイム24にかかるのれんを46百万円計上した(のれんは5年均等償却)。 負債合計は前期末比239百万円増加の944百万円となった。設備投資資金等により有利子負債が213百万円増加したことが主因だ。純資産合計は同203百万円増加の2,038百万円となった。親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金のマイナスが432百万円から287百万円に縮小したほか、株式発行により資本金及び資本剰余金が29百万円それぞれ増加した。 経営の安全性指標である自己資本比率は前期末比3.9ポイント低下の68.3%となり、有利子負債比率は逆に10.0ポイント上昇の14.2%となった。有利子負債の増加により財務体質はやや悪化したものの、ネットキャッシュ(現金及び預金−有利子負債)は520百万円のプラスとなっており、自己資本比率も60%以上の水準であることから、財務の健全性は維持しているものと判断される。同社は2026年3月期も積極投資を行う方針を打ち出している。このため、当面は安全性指標の悪化が続く可能性が高いが、2028年3月期以降は先行投資の効果が顕在化し、利益が成長フェーズに移行することで財務体質も改善に向かうものと予想される。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《HN》 記事一覧 |