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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/12/22 11:03, 提供元: フィスコ GLテクノ Research Memo(3):人と社会の基盤を支える技術領域形成へのアプローチ*11:03JST GLテクノ Research Memo(3):人と社会の基盤を支える技術領域形成へのアプローチ■ジーエルテクノホールディングス<255A>の事業概要 1. 事業概要 (1) 分析機器事業/ジーエルサイエンス ジーエルサイエンスが展開する「分析機器事業」は、医薬品研究開発、化学工業品の品質管理、食品中の有害物質検出、水道水の水質検査など、幅広い分析ニーズを支えるものである。特に、クロマトグラフィーという分析手法を柱に据えており、LC用カラムやGC用カラムなど消耗品及び装置を中心に製造・販売している。これら製品は、ジーエルサイエンスが約40年にわたり培ってきた化学・分離技術とノウハウを活用し、国内外で高く評価されている。また、自社製品だけにとどまらず、他社メーカーの装置や消耗品も取り扱い、「最適ソリューション提案型」の営業体制を構築しており、顧客の分析環境・用途に応じて柔軟に製品を選定・カスタマイズし、分析の効率化・高度化を支援している。さらに、グループ会社としてLC用ユニーク装置・消耗品を手掛ける子会社を有し、送液ポンプ等の部材を「クロマトグラフィー」だけでなく「フロー合成」といった近年注目の技術領域にも展開させている。 このように、分析機器事業は「クロマトグラフィーを軸とした消耗品・装置の展開」「他社製品も含めたソリューション提案」「グループ体制による技術・製品の拡張」という構造を通じて、確かな技術と幅広いサービスを提供している。業績面では食品・医薬・環境など幅広い分野の需要に支えられ、景気変動の影響を受けにくい安定型セグメントである。2021年3月期から2025年3月期にかけて売上高は15,246百万円から19,965百万円へと拡大し、CAGRは7.0%となった。堅実な成長を続ける同事業は、グループの収益基盤として中核を担っている。 (2) 半導体事業/テクノクオーツ 「半導体事業」は、テクノクオーツを中心に、半導体製造装置で使用される高付加価値消耗品を製造・販売する事業である。特に、半導体製造の前工程(エッチング、CVDなど)に用いられる反応室の治具として、石英ガラス及び結晶シリコン材料を用いた製品を提供しており、これが当該事業の中核である。テクノクオーツが持つ加工技術は、石英ガラスと結晶シリコンの双方を対象としており、近年さらに高まる製造装置の性能向上・微細化・高清浄度ニーズに対して、装置メーカーと協働しながら対応を進めている。また、機械加工設備を多く導入するとともに、従来からの火加工(職人による熱処理・手仕上げ)も併用することで、複雑形状や高精度要求への対応体制を構築している。 このように、同社の半導体事業は「材料(石英ガラス・結晶シリコン)+加工(機械加工・火加工)+装置メーカーとの協働」による高機能部材提供を通じて、半導体製造プロセスの中でも特に高度化が進む前工程において重要なポジションを確立している。業績面ではAI・5G・自動運転といった次世代分野の拡大を追い風に急成長している。売上高は2021年3月期から2025年3月期で12,732百万円から21,313百万円へ増加し、CAGRは13.7%と高水準。市況変動の影響を受ける局面もあるが、AI需要を中心に今後も成長スピードの加速が見込まれる。 (3) 自動認識事業/ジーエルソリューションズ ジーエルソリューションズを中心に展開する「自動認識事業」は、RFIDを核とし、以下の4つの製品/サービス領域を提供している。 1) 「機器組込型製品」では、他社機器に組み込み可能なリーダライタ機能を基板モジュールとして提供し、アンテナ分離型、アンテナ一体型など用途・形状に応じた設計を行っている。 2) 「完成系製品」では、壁掛け型リーダライタ、USB接続型卓上リーダなど、筐体付きの完成品をシステムメーカーやエンドユーザー向けに提供している。 3) 「システムソリューション」では、RFIDリーダライタに加えて、それを用いたセキュリティキャビネット、顔認証端末、試薬管理システムなど、機器+ソフトウェア+サービスを組み合わせた厳正化・効率化・見える化支援ソリューションを展開している。 4) 「カード・タグ」領域では、ICカード、ラベルタグ、特殊加工タグの提供及び印刷・エンコード作業などの付帯サービスも含めてワンストップで支援している。 このように、自動認識事業は、自社製モジュール・完成機器からカード・タグ、さらにそれらを活用したシステムまで一貫して提供することで、顧客の「誰が・いつ・どこで・何をしたか」を非接触で捉え、流通・物流・医薬・設備管理等多様な用途において、効率性・安全性・トレーサビリティ向上を支援している。業績面ではRFIDや顔認証などDX関連の需要を取り込み、売上高は2021年3月期から2025年3月期で1,238百万円から1,982百万円へ拡大、CAGR12.5%と高成長を維持している。グループ全体ではまだ小規模だが、顧客の要望に応じてオーダーメイドでソリューション提供している競合他社は見当たらず、物流・医療・オフィスセキュリティ分野での応用拡大により、今後の成長ドライバーとして期待される。 2. 安定×成長×創出の3層構造の経営戦略 以上のことから、同社の経営戦略は「安定×成長×創出」の3層構造により形成されている。 (1) 分析機器事業:「安定収益深化戦略」 分析機器事業は、既存顧客の深耕と高付加価値製品の拡販を通じて、景気変動に強い収益基盤を磨く戦略と捉えられる。戦略の中核は「既存顧客への深耕」と「グローバル販売網の強化」である。国内では製薬・食品・化学分野を中心に装置・消耗品の複合提案を強化し、顧客の分析効率化ニーズに応える。一方、海外では販売代理店の最適化や現地販売体制の拡充を進め、特にアジア・欧州市場での拡販をねらう。 (2) 半導体事業:「成長加速戦略」 半導体事業は、生産能力拡大と技術革新を両輪に、グローバル需要を取り込みながら収益拡大を図る戦略である。グループの成長エンジンとして最も高い成長率を想定している。重点戦略は「生産能力拡充」と「技術競争力の深化」である。山形及び喜多方工場での新棟建設、ベトナムにおける現地法人の設立により生産能力を拡大させ、AI・自動運転・データセンター向け半導体の需要増に対応している。 (3) 自動認識事業:「新領域創出戦略」 自動認識事業は、RFID・IoT技術を軸に、新たな市場を切り拓く戦略である。現段階ではRFIDやICタグを中心とした新成長ドメインとして育成段階にある。重点戦略は「RFID市場の拡大をけん引すること」と「システムソリューション化」である。物品・試薬管理、入退室管理など既存分野に加え、医療・製薬・物流分野での案件拡大を図る。製品単体販売から、ソフトウェア・運用サービスを含むトータルソリューション提供へと進化させ、イノベーターとして新領域創出を目指す。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲) 《HN》 記事一覧 |