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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/09/05 13:20, 提供元: フィスコ 旭有機材:半導体製造で不可欠な存在、事業成長と資本効率改善で「グレートニッチトップ」を目指す*13:20JST 旭有機材:半導体製造で不可欠な存在、事業成長と資本効率改善で「グレートニッチトップ」を目指す旭有機材<4216>は、樹脂バルブの国内トップメーカーとして、管材システム事業、樹脂事業、水処理・資源開発事業の3事業を展開している。2024年度の売上構成比では、管材システム事業が61%を占め、樹脂事業27%、水処理・資源開発事業12%となる。同社は「ニッチトップ」から「グレートニッチトップ企業」への進化を掲げ、グローバルに事業を展開。2024年度の海外売上高比率は、管材システム事業の売上の中で48%、樹脂事業同28%、全社では同37%となる。 主力の管材システム事業では、金属バルブと比較して腐食リスクが低い樹脂バルブに強みを持ち、化学、非鉄金属、農業、半導体など特殊用途で広く採用されている。樹脂バルブにおいて国内ではトップシェアを誇る。半導体分野では、前工程向けの小型精密バルブ「Dymatrix」、高精度流量制御機器の「FALCONICS」は微細化の進む先端半導体製造で不可欠な存在であり一定のシェアを確保。不良率を抑えるための厳しい要求に低発塵化技術など高い技術力で対応、良品率に大きく貢献している。そのほか、半導体工場の超純パイプ・純水装置周りにおけるユーティリティ配管の設計・施工も行っている。樹脂の配合技術「安心・安全」を支える品質管理システムと、耐久性と信頼性を形にする成形技術が評価されている。 また、樹脂事業は、電子材料・発泡材料・素形材に分かれているが、どの材料も社会に不可欠な存在となる。電子材料では、半導体の製造・高度化に不可欠な材料を展開し、レガシー・先端半導体のフォトレジスト材や下層下地材など低メタル化技術に強みを持つ。発泡材料は、マンション・商業施設・倉庫などに使用されるが、複雑形状部へ施工でき、効率良く気密性の高い断熱工事が可能となる。また、世界最高クラスの現場発泡断熱システム「BEXUR」を開発し、ビル・マンション 現場発泡断熱材市場でもニッチトップの地位を目指している。素形材製品はエンジン部品等の鋳造プロセスで使用されており、自動車関連メーカーの生産活動地域に工場を設置。自動車産業を中心に安定需要を背景に国内トップシェアを堅持している。電子材料分野では、複数プレイヤーの中でFPD・半導体業界において着実に成長しており、素形材では高付加価値品で国内トップを堅持している。また、発泡材料分野では、高断熱性能製品で更なる成長を追求している。 水処理・資源開発事業は、温泉井戸掘削で国内トップクラスの実績を有し、地熱発電井や中水処理施設施工でも国内ナンバーワンクラスの実績を誇る。環境課題解決に直結する事業として、ESG投資の拡大を追い風に成長余地は大きい。 同社の競争優位性は、70年以上にわたり樹脂バルブを開発・提供してきた実績と信頼、顧客の設計・実装段階に寄り添う提案力にある。樹脂バルブでの圧倒的シェアと半導体特化製品群の存在に加えて、管材システムから電子材料までをカバーする一貫体制と米中印などに広がるグローバル生産拠点、水資源保護・省エネ建材・再生可能エネルギーといったSDGs対応も積極に行っている。具体的には、半導体前工程向けの低発塵製品や高機能バルブでは差別化に成功しており、大手国内企業と微細化対応や薬液管理に直結する技術で信頼を獲得している。 2026年3月期第1四半期の売上高は20,009百万円(前年同期比1.1%減)、営業利益2,163百万円(同22.8%減)で着地した。管材システム事業は、半導体装置向け需要が堅調だったものの、米国の関税政策を背景に国内外の設備投資が停滞し、固定費増加も響いた。一方、樹脂事業は増収増益と好調で、生成AI関連需要やレガシー半導体の回復により電子材料が伸長し、素形材も価格改定と高付加価値シフトが寄与した。水処理・資源開発事業は増収を確保したが、地熱開発や温泉掘削の案件減少と固定費負担により赤字となった。2026年3月期通期の会社計画は、売上高85,000百万円(前期比0.2%減)、営業利益9,000百万円(同19.1%減)を見込んでいるが、1Qの進捗は概ね順調と認識できよう。半導体市場の成長鈍化や米国投資環境の不透明感が足元では重しとなるものの、電子材料事業の拡大や構造改善の取り組みを通じ、一定の収益水準の維持を図る方針である。 事業環境は、半導体工場建設の投資意欲は底堅く推移しており、同社の管材システム事業・樹脂事業ともに半導体関連もAI関連製品や中国市場の伸びによる成が見込まれる。自動車ではEV化が軽量化ニーズを押し上げ、建築分野では省エネ規制強化が断熱材需要を支える。一方、米中対立や地政学リスクの高まりのほか、国内設備投資は堅調に推移しているが、資材価格高騰や人手不足が要因での計画見直しや遅延の懸念がある。そのほか、水処理や再生可能エネルギーは、世界的な環境投資の流れを背景に持続的成長が期待できる。 中期経営計画「GNT2025」では、2025年度に売上高870億円、営業利益120億円、ROE11%を目標に掲げ、すでに前倒し達成を果たしている。長期の目標では、2030年度には売上高1,200億円・営業利益200億円を掲げ、2035年ごろには売上高2,000億円・営業利益400億円を目指している。2030年度までは将来の飛躍のための準備期間にもなるようで、設備投資・人的資本投資を積極実施し、インオーガニック成長を含む事業拡大を図っていく。事業ポートフォリオの進化も想定しており、成長投資として延岡製造所の近代化や電子材料新工場の建設などを行い、グローバルな供給力強化と先端材料の拡充を進める。 株主還元方針については、2026年3月期に年間配当120円(中間60円、期末60円)を予定。今期から2030年度までの期間において、1株当たりの年間配当金は前年以上を維持する累進配当とし、継続的な収益拡大の達成による増配を目指すほか、総還元性向は財務の健全性(D/Eレシオ0.5以下)を考慮しながら6年間累計として50%を目安としている。 旭有機材は樹脂バルブにおいてグローバルニッチトップの地位を確立し、電子材料、水処理や地熱といった分野でも存在感を高めている。今期に関しては外部環境の影響から減収減益見込みとなっているが、投資の時期を含めて来期以降の回復に向けての準備期間となる。生成AIや先端半導体需要に支えられた樹脂事業の成長が収益を下支えし、中長期的には収益性と資本効率の改善が進む見通しである。6月以降株価は右肩上がりでじり高基調を継続しているが、株主還元方針の強化も評価でき、今後は投資の成果と成長投資の実現度合いに注目が集まろう。新中計については、2025 年 11 月頃に骨子を発表予定で、樹脂を極めてニッチを制す同社の今後の持続的な成長にはかなり注目しておきたい。 《FA》 記事一覧 |