携帯版 |
![]() |
![]() |
|
フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/09/22 12:40, 提供元: フィスコ ソラコム:安定的なリカーリング収益とAI分野への投資継続で成長加速へ*12:40JST ソラコム:安定的なリカーリング収益とAI分野への投資継続で成長加速へソラコム<147A>は、「IoTプラットフォーム」を軸に、機器に組み込むSIMカードやeSIMによる通信回線、データの可視化・管理・解析を行うクラウドサービスを一体的に提供する。 事業は大きく二つに分かれる。一つは「リカーリング収益」(継続課金型収益)で、IoT回線やクラウドプラットフォームの利用料が該当し、売上の7割以上を占める。もう一つは「インクリメンタル収益」で、デバイス販売や受託開発などが含まれる。リカーリング収益の比率が高いため、売上の安定性が高く、アカウント数や回線数の積み上げによって長期的な成長が期待できる。特に米国・欧州など海外での新規顧客獲得が進んでおり、海外売上比率は年々上昇している。さらに2025年8月には丸紅I-DIGIOと共同で、MVNO事業を分社した「株式会社ミソラコネクト」の事業を開始し、IoT分野における戦略的協業を開始した。 2026年3月期第1四半期の売上高は22.2億円(前年同期比17.7%増)、営業利益は1.2億円(同35.0%増)と増収増益を確保した。リカーリング収益は18.4億円(同19.7%増)となり、2桁の増益を達成した。一方、インクリメンタル収益については、下期偏重傾向が残るものの、KDDIシナジー売上は前年同期比52%増と包括契約の枠組みの効果により今年度は順調に進捗している。 2026年3月期通期の業績予想は、売上高108億〜118億円(前期比20.1〜31.2%増)、営業利益6億〜7.5億円(同8.6%減〜14.2%増)のレンジで示されており、下限値は為替影響を織り込んだ保守的な見通しとなっている。ただし、ミソラコネクトの期中連結効果やHiltonなどの大型案件の寄与が下期以降に本格化すれば上振れの可能性がある。さらにAI活用による効率化で販管費の伸びを抑制しており、利益率改善の余地も広がる。加えて、新サービス「Wisora」の提供を開始し、生成AIボットを簡単に学習・設置できる環境を提供している。もともと社内効率化に利用していた仕組みを外部向けに実装したもので、企業は独自情報を組み込んだAIボットを短期間で導入でき、問い合わせ対応や業務支援を自動化できる。社内外での活用を通じて顧客価値向上と業務効率改善を両立する点が強みである。 競合環境としては、国内では通信キャリア系のIoTプラットフォームや、海外ではグローバルIoT接続事業者が存在するが、同社はモバイル・コアシステムをソフトウェアとして社内で内製し、クラウドネイティブで拡張性の高いサービスを提供できる点に優位性がある。さらに、デバイスから回線、クラウドまで一気通貫で提供することにより、導入コストを抑えつつスピーディーにサービス展開できる強みを持つ。ミソラコネクトとの協業は、クラウドに強みを持つ同社と、大容量案件に強いオンプレ基盤を持つミソラコネクトが補完し合う関係である。監視カメラやサイネージなどの大容量トラフィック案件を取り込み売上拡大につなげるとともに、オンプレとクラウドを最適に組み合わせることでコストを低減。さらに同社のソフトウェアアセットを活用し、ミソラの粗利率を50%程度まで改善させることで、中期的な収益力強化に貢献する。 中期的には、5年程度で売上200億円超、リカーリング収益140億円超を目指す計画を掲げている。また、海外売上比率を50%超まで引き上げる方針だ。マーケットが大きく、高品質サービスに対価を払う文化が根付いている米国での展開を加速させる。長期的にも、IoT機器の急増と通信量拡大は不可避であり、クラウドネイティブな事業基盤を持つ同社の優位性は持続すると考えられる。 株主還元については、現時点で配当は実施していないが、成長投資を優先する姿勢を明確にしている。その一方で株主優待制度を導入しており、600株以上保有の株主に対して、同社のモバイルサービス「Soracom Mobile」で利用できる30ドル分のクーポンコードを年6回(合計180ドル相当)提供している。株主優待を通じてサービス体験を促し、自社顧客への転換を狙うユニークな施策といえる。 同社は、IoT通信とクラウド基盤を融合した独自のビジネスモデルを強みに、安定的なリカーリング収益を積み上げながら高成長を維持している。足元では生成AI関連への継続投資により一時的に粗利率が低下しているものの、海外における大型案件の進展や、IoT・AI分野でのリカーリング型サービスの拡充、新サービスの投入を通じて、今後さらなる成長加速が期待される。 《HM》 記事一覧 |