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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/11/11 11:24, 提供元: フィスコ NISSOホールディングス:人材育成投資を軸に持続的成長を目指す総合人材サービス企業*11:24JST NISSOホールディングス:人材育成投資を軸に持続的成長を目指す総合人材サービス企業NISSOホールディングス<9332>は、製造業を中心に総合人材サービスを展開する企業である。グループの中核である日総工産が1971年に創業し、半世紀以上にわたり製造請負・派遣領域で業界をけん引してきた。現在は自動車、半導体、電子部品を中心とする製造生産系人材サービスを主軸に、エンジニア系、事務系、介護・福祉など多様な分野を展開し、国内外に約1,300社の顧客基盤を持つ。人材を「重要な資本」と位置付け、熊本や関西など全国9か所の教育研修施設を整備するなど、リスキリングや職場づくりへの投資を継続している。同社は2023年10月に純粋持株会社体制へ移行し、機動的なM&Aと戦略的な資本配分を進める体制を整えた。 同社の強みは、第一に製造業派遣で培った「人材開発メソッド」にある。近年のテクノロジーの急激な進歩やそれに伴う製造現場のニーズの変化にいち早く対応し、必要とされる高度な製造スキルを持つ人材を育成するノウハウを独自に培ってきた。現場で使われる製造装置を用いた実践研修やOJTを組み合わせ、派遣社員をより高付加価値人材へと育成している。第二に、インダストリー戦略として「オートモーティブ」「セミコンダクター」「エレクトロニクス」の3領域に特化し、時代に即した専門人材を供給できる点が挙げられる。AIや半導体、そして人型ロボットなどの普及によって将来的に訪れる製造現場のイノベーションを見据えた人材育成に積極的に取り組んでいる。社会の変化を成長機会と捉え、より期待値の高い領域にリソースを集中させている。第三に、取引先企業の社員教育やリスキリング受託にも拡大しており、人材育成力を事業機会へ転化している点である。またこれは派遣社員の高いパフォーマンス・離職率などが顧客から評価されている証左でもあり、「NISSOだから相談できる」という堅い信頼を獲得している。 2026年3月期第1四半期(2025年4〜6月)の連結業績は、売上高24,964百万円(前年同期比0.8%減)、営業利益429百万円(同51.1%減)と減収減益となった。要因は、暦の関係による稼働日数減少と、新卒研修や採用投資の集中による一時的なコスト増である。一方で、エンジニア系人材サービスの在籍者数は増加し、製造生産系人材サービスからのキャリアチェンジが進んだ。通期では売上高115,000百万円(前期比13.2%増)、営業利益4,000百万円(同12.5%増)を見込み、下期偏重の計画どおり順調に推移している。第2四半期以降は子会社化したMan to Manホールディングスおよびオールジヤパンガードの業績寄与が見込まれる。 今後の成長見通しとして、同社は中期経営計画(2026年3月期〜2028年3月期)で、最終年度に売上高150,000百万円、営業利益7,500百万円(営業利益率5%)を目標に掲げている。成長ドライバーは、(1)半導体・EV・蓄電池分野での専門人材育成、(2)リスキリング投資による請求単価上昇、(3)M&Aによる事業ポートフォリオ拡大の3点である。特に熊本テクニカルセンターでは実機装置やVR訓練を用いた研修を拡充し、年間育成人数を100人から300人に増強。TSMCやソニーの半導体工場の量産開始が見込まれる2027年をターゲットに、先行投資を進める。また、ROE平均20%以上・配当性向30%以上を目標とし、人的資本経営と財務健全性の両立を図る。日本社会全体で見た時に、人口減少による製造現場の人手不足や技術革新による更なる必要スキルの高度化は不可避であり、同社はそうした社会的ニーズの根幹を支える総合人材サービス会社として成長していくことを目指している。 株主還元方針については配当性向30%以上を基準としており、2026年3月期に年間25円(前期22円)への増配を予定し、安定配当を維持している。現在は事業拡大フェーズの中盤であり、さらにM&Aを伴う拡大を進めて一定の段階に達した際には増益に応じた還元をしっかりと行っていく姿勢を示している。加えて、自己株式の取得やDOEの安定化を視野に入れ、成長投資とのバランスを重視している。足元の配当利回りは3.8%となっており、投資妙味が高いと言える。 総じて、NISSOホールディングスは、製造業派遣のパイオニアとして築いた信頼を基盤に、更なる先進的製造現場への人材供給を進めていく。短期的には教育投資負担が利益を圧迫する局面もあるが、中期的には半導体・エンジニア分野での需要拡大とM&A効果が業績を押し上げる見通しである。労働市場の変化に先回りする育成力と、持続的な企業価値向上に向けた経営姿勢に、今後も注目していきたい。 《HM》 記事一覧 |