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フィスコ投資ニュース配信日時: 2026/04/01 11:33, 提供元: フィスコ 不二精機 Research Memo(3):精密金型と精密成形品の二本柱。国内マザー機能とアジア量産網で支える供給体制*11:33JST 不二精機 Research Memo(3):精密金型と精密成形品の二本柱。国内マザー機能とアジア量産網で支える供給体制■事業概要 1. 事業概要 (1) 事業概要 不二精機<6400>は、現在は射出成形用精密金型及び成形システム事業と精密成形品その他事業の2事業で事業展開している。射出成形用精密金型及び成形システム事業では高度な金型設計ノウハウと加工技術を有し、1) ハイサイクル、2) 多数個取り、3) 不良率・バラツキの極小化、4) ロングライフを特徴とした、高付加価値な精密金型製造を行っている。具体的には精密・高品質が求められる透析装置であるダイアライザーや注射器、製品コストの削減も求められる食品用キャップ・容器等がある。また精密成形品その他事業では、精密金型の競争力を活用し、参入障壁の高い自動車関連部品分野に絞り事業展開している。 2025年12月期における売上構成比は、射出成形用精密金型及び成形システム事業が35.4%、精密成形品その他事業が64.6%となっている。また営業利益構成比(セグメント間取引消去前)では射出成形用精密金型及び成形システム事業が34.2%、精密成形品その他事業が65.8%となっている。 (2) 射出成形用精密金型及び成形システム事業 射出成形用精密金型及び成形システム事業は、「精密プラスチック金型の不二精機」を前面に掲げ、ハイサイクル、多数個取り、不良率・バラツキの極小化、ロングライフな精密成形用金型を強みに、事業を展開してきた。その代表的な製品がCD用プラスチックケース向け精密金型並びに周辺機器を組み合わせた成形システムである。CDは1979年にソニーグループ<6758>とRoyal Philips 同社は、CDケースで培った金型技術を生かし、1997年9月に現在の主力となる注射器用精密金型を開発した。その後、ダイアライザー、シャーレ、点滴用品などの医療分野へ大きく舵取りを変化させた。現在、医療用・食品容器用精密金型がダイアライザー向け等を中心に売上の大半を占めている。一方、2002年12月期に6割を占めた光学・家電関連は現在では売上比数%程度の水準となった。 金型事業の特性として、すべてカスタムメイドであり、トライ&エラーの機会が多い高付加価値製品を製造している点が挙げられる。このため、受注が多い時期にはライン稼働率が満杯になり、工場キャパシティの限界に直面する点が、マネジメント上の課題となっている。 (3) 精密成形品その他事業 精密成形品その他事業は、精密金型で培ったノウハウを生かすため、2001年1月にタイにTHAI FUJI SEIKI CO., LTD.を設立したことに始まる。同年9月に中国上海、2002年3月には蘇州と、相次いで精密成形品の生産拠点を設けた。当初の成形品はCDケース、デジカメのオートフォーカスレンズ鏡筒部品が中心だったが、CDの衰退により蘇州工場は業績が急降下し、2014年にすべてを譲渡し撤退した。CDケース事業の減退が同事業全体の足を引っ張り、同事業の収益は蘇州撤退時の2014年12月期まで不安定な状況が続いた。 一方で、非情報関連の拡大を目指し、長期的に安定した需要分野として自動車関連事業をターゲットとした。タイで納入していた精密金型の技術力が評価され、大手自動車メーカー系の日立Astemo(株)(現 Astemo(株))に2輪向け成形品を納入したことが始まりである。2011年にはタイの大洪水で大損害を被ったが、大手Tier1メーカー向けにワイヤーハーネスの留め具なども供給し、日系自動車部品現地法人向けを中心に、2輪向けに加え4輪向けにも安全保安部品などの小物自動車部品成形品が拡大してきた。年々4輪向けの売上比率が高まり、現在は2輪向けに並ぶ勢いとなっている。同事業の売上高の中で、2輪・自動車関連部品成形品が中心となっている。 同部門の収益力が安定してきたのは、蘇州からの撤退に加え、先行投資負担が大きかったインドネシア子会社の売上が順調に拡大し、2016年12月期に営業黒字化したことが転機となっている。その後も、インドネシア子会社の業績は堅調に推移しており、収益貢献度が高まっている。 成形品事業はタイとインドネシアが主力拠点である。これらの地域ではまだ二輪車市場が大きく、EVの影響をそれほど受けていない。従来型のガソリンエンジン車向け部品が引き続き堅調に推移している。 一方で、EV向け複合成形品の開発を積極的に進めている。研究開発の方向性として、鈴鹿工場で大手Tier1メーカーとの共同開発を推進しており、ハーネスやコネクター向けの精密金型技術を活用した製品開発に注力している。大手Tier1メーカー2社からもEV・燃料電池関連の開発案件を受注しており、2025年度の研究開発費は1.93億円に達している。 ただし、EV向け製品はハイブリッド車よりも高電圧仕様であり、技術難易度が高く競合が少ないため収益性は高いものの、EV普及の遅れにより収益貢献時期は不透明である。現時点では既存の射出成形用精密金型及び成形システム事業と精密成形品その他事業がEV開発の先行費用を補填する構造となっている。 中国2拠点(上海と常州)では現地中国人スタッフが責任者を務めており、親会社との関係は極めて良好である。日中政府間の緊張とは対照的に、民間レベルでは影響がなく、事業運営は円滑に進んでいる。 2. 経営戦略の評価 同社の経営戦略は、環境変化に応じて培ってきた内部資源を変革させ適応させるダイナミック・ケイパビリティ戦略が実践されている点で高く評価できる。 同社はCD用プラスチックケース向け精密金型で1990年代に大きく成長したが、iPodやネット配信の普及によりCD市場が激減する中、同事業の大幅な需要減に見舞われた経験を持つ。しかし、CDケースで培った精密金型技術を医療分野へ転用し、1997年9月に注射器用精密金型を開発した。現在では医療用・食品容器用精密金型が売上の中心的な位置付けになるまで事業構造を転換させている。 精密成形品その他事業においても、CD市場衰退後、蘇州工場から撤退しつつ、自動車関連部品に軸足を移した。タイで納入した精密金型の技術力が評価され、大手自動車メーカー系や大手Tier1メーカー向けに2輪・4輪向け部品を拡大させ、現在では同事業の約7割以上を占めている。さらに現在は、樹脂成形品に金属端子を組み合わせたEV向け複合成形品の開発に注力し、大手Tier1メーカーとの共同開発や大手Tier1メーカー2社からの受注獲得など将来の柱となる事業への投資を進めている。 このように、同社は市場環境の激変に直面する度に、コア技術である精密金型技術を生かしながら新たな成長分野へ事業を再構築してきた。今後の変化の激しい事業環境においても、同社は変革し続けられる可能性を感じる。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲) 《HN》 記事一覧 |