投資の検討対象となっている銘柄が割高か、割安かを判定するために、さまざ
まな指標が使われます。その中でも、最もポピュラーなのが、
「PER(株価収益率)」、「PBR(株価純資産倍率)」、「配当利回り」といっ
たところでしょう。
簡単にこれらの指標を説明しますと、以下のようになります。
・PER:株価を1株当たり当期純利益で割って求める(単位:倍)。
株価が1株当たりの当期純利益の何倍まで買われているかを表す。
・PBR:株価を1株当たり純資産で割って求める(単位:倍)。
株価が1株当たりの純資産の何倍まで買われているかを表す。
・配当利回り:年間配当額を株価で割って求める(単位:%)。
現在の株価で買えば、株価の何%の配当収入が得られるかを表す。
まずは、各銘柄が、PER、PBR、配当利回り、あるいはその他の指標のうちどれ
を根拠に株価が形成されているのかを見極めることが重要です。
例えば、PER、PBR、配当利回りが以下のような3つの会社があるとします。
A社:PER10倍、PBR4倍、配当利回り1%
B社:PER80倍、PBR0.6倍、配当利回り1.5%
C社:PER60倍、PBR2倍、配当利回り4%
これら3社の株価が割高か、あるいは割安か、どのように判定すればよいでし
ょうか。仮に、PBRだけで判定しようとすると、0.6倍と最も数値が低いB社が
最も割安と判断できます。
では、PBRが4倍であるA社の株価は割高なのでしょうか。実はそうとも言い切
れません。なぜなら、A社のPERは10倍と、かなり低い数値になっているからで
す。PERで見れば、A社の株価は割安なのです。
同様に、PBRが2倍のC社はどうでしょうか。これも、配当利回りという指標に
着目した場合、4%という非常に魅力的な数値になっています。
つまり、A社、B社、C社ともに株価は割安な水準にあるといえるのです。
このように、どの銘柄もPERだけ、PBRだけ、配当利回りだけ、といった具合に
1つだけの指標を基準として株価の高安を判断しようとすると、往々にして誤
った判断になりがちです。少なくとも、PER、PBR、配当利回りの3つの観点か
ら判断するようにしましょう。
ただし、ここで気をつけなければいけない点があります。
株式投資の入門者向けの書籍では、例えば「PERが低ければ割安だから買い」
「PBRが1倍を切っていたら株価は割安」「配当利回りは高ければ高いほどよい」
という説明がなされています。
この説明は、確かに根本的には誤ってはいません。しかし、実際にPER、PBR、
配当利回りを判断基準に銘柄を選ぶときは、もう少し突っ込んだ分析をしない
と、銘柄選びを誤ることになりかねませんので注意が必要です。実践的にPER、
PBR、配当利回りを使いこなす方法については、次回以降にご説明します。