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フィスコ投資ニュース配信日時: 2026/10/09 15:45, 提供元: フィスコ ウルフパックに企業はどう備えるか――太田洋弁護士に聞く(1)*15:45JST ウルフパックに企業はどう備えるか――太田洋弁護士に聞く(1)フィスコでは、2026年1月8日に株式会社実業之日本総合研究所(以下「実日総研」)と、アクティビスト投資家やいわゆるウルフパック等による予期せぬ会社支配権の取得、株主提案、委任状争奪戦(プロキシーファイト)等に対応する買収防衛コンサルティング分野における協業を開始している。 近年、上場企業を取り巻く資本市場環境は変化している。アクティビスト投資家の活動に加え、複数の投資家が関係を明らかにしないまま協調して株式を取得する、いわゆるウルフパック戦術や、SNS・メディアを通じた情報発信などを背景に、企業が短期間で対応を迫られる場面もある。 今回、敵対的買収やアクティビスト対応を数多く手掛けてきた弁護士の太田洋先生に話を聞いた。(聞き手:山本泰三=フィスコアナリスト) ――― ―まず、先生のご経歴からお伺いします。企業防衛を専門分野とされたきっかけや、この分野の面白さ、難しさについてお聞かせください。 企業防衛については、西村あさひに入ってからずっと取り組んできました。私の入所前に、当事務所では、小糸製作所対ピケンズ事件を手掛けており、就職活動で事務所を回っていたときにその話を聞いて感銘を受けたことを覚えています。 弁護士は基本的に、社会正義の実現に寄与する仕事だと思います。一方、企業法務を扱う事務所には、プライベート・インタレストの追求だけを行っているようなイメージもありました。ただ、小糸製作所対ピケンズ事件は、真面目な日本のものづくり企業をグリーンメーラーから守るという案件でした。真面目に企業価値向上に取り組んでいる会社を、行き過ぎたアクティビストの攻勢や敵対的買収から守ることで、中長期的には株主にも会社にもステークホルダーにも喜んでもらえる。社会正義の実現に直接つながる分野だと感じ、比較的早い段階から専門にしてきました。 この分野ならではの難しさと面白さは、まさに「難しいから面白い」という点にあります。特に、矛と盾がぶつかり合う分野なので、常に攻める側と守る側の双方が進化していきます。 例えば、有事導入型買収防衛策については、東芝機械の案件を経て、株主総会で通常決議を得れば対抗措置を発動できるという考え方が確立しました。すると今度は、市場内で急速に40%程度まで株式を買い進めれば、防衛策を無力化できるのではないかという動きが出てきました。東京機械製作所案件では、それに対して、買収者側の議決権を決議に際して考慮しないMoM決議を利用して会社の防衛に成功しました。 単独の買付者が40%程度まで取得すれば、目を付けられて止められる。そこで今度は、複数に分散して関係を分かりにくくしたうえで攻める。これがウルフパック戦術が登場してきた背景だと考えています。矛と盾が双方とも進化していくため、非常にダイナミックです。企業法務の中でも最先端の分野であり、仕事として大きなやりがいがあります。 ―数多くの企業防衛案件を手掛けられてきた中で、直近の地域新聞社<2164>の案件をどのように位置付けていますか。 東京機械製作所の案件では直接的にはアジア開発キャピタルが相手でしたが、この案件も実はウルフパック戦術が使われた案件でもありました。従って、当時から、ウルフパックという極めて不透明で問題のある戦術が使われていると認識していました。その後、2022年にはナガホリから依頼を受け、それ以降、いくつかの会社で継続的にウルフパックへの対応を行ってきました。ウルフパック対応は相手方の実態が不透明なので、非常に手間がかかり、難しいです。 今回の地域新聞社の案件でも、細谷社長は当初から対抗措置の発動を考えていましたが、うまく機会を捉えなければ発動は難しいと思っていました。ただ、今回は、信用取引の形で保有されていたとみられる株式について、非整数倍の株式分割を契機に真の株式保有者を把握でき、共同協調行為の認定に必要な材料が増えました。何とか防衛できましたが、適切なタイミングで対抗措置を打てたことが大きかったと思います。 ―1株を1.8株とする非整数倍の株式分割は、どのような経緯や発想から生まれたのでしょうか。 信用取引を利用する動きについては、前年秋の定時株主総会以降、第1回の共同協調行為の認定を行った後に認定対象となった株主が一斉に株主名簿から姿を消し、他方で、信用買いの建玉がそれとほぼ同量だけ急増していたこともあって、おおよそ把握していました。ただ、実際の保有者をどう確認するかが非常に悩ましい問題でした。非整数倍の株式分割を行えば、信用取引の買い方が現引きするなどして、実質的な保有者を把握する手掛かりになるのではないかという発想は、細谷社長から出てきました。それを防衛策の発動につなげられないかと相談を受けました。 このような目的で株式分割を使った例はほとんどなく、相手方から争われた場合に法的に耐え得るかを検討しました。その結果、適法性を十分説明できるのではないかと判断しました。保有者を把握した後は、適切なタイミングで対抗措置を打つ必要があります。11月の株主総会をターゲットにしてくるだろうと見込み、そこから逆算して、法的な根拠を十分に検討したうえで株式分割を実行しました。 ―ウルフパック株主以外の、信用取引を利用する一般投資家への影響にも配慮が必要だったと思います。対象となる投資家をどう区別しましたか。 信用取引の買い方には現引きという選択肢がありますが、そのために資金が必要になるなど、投資家ごとに影響は異なります。また、信用取引のまま保有を続ける一般の投資家もいます。そのような善意の一般投資家・株主が、割り当てられた新株予約権の行使を通じて最終的に株式を取得できるよう、どのような対応をすればよいかが難しい点でした。 具体的には、日証金や証券会社に割り当てられた第1新株予約権については、一定の誓約書などを提出し、非適格者等に該当しないことを確認したうえで、第2新株予約権を通じて株式を取得できる仕組みを設けました。日証金や証券会社との調整を含め、この部分がスキーム設計上、最も時間を費やしたところです。 ウルフパックに企業はどう備えるか――太田洋弁護士に聞く(2)へ続く 《FA》 記事一覧 |